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リップヴァンウィンクルの花嫁

岩井俊二監督の「花とアリス」以来12年ぶりの長編実写の日本映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」が公開されていますね。

 

岩井俊二の長編実写映画はとにかく時間が長めなのですが、今回はこれまでの作品の中でも一番長い160分。

 

上映時間が約3時間ということで、観に行くのにはなかなかの気合いが必要。
しかも、2時間にまとめられた配信限定版の「リップヴァンウィンクルの花嫁」がAmazonでも観られるので、そちらでも良いかも…と思いつつ、先日、気合いを入れつつ劇場に観に行って来ましたよ!

 

お話は派遣教員をしている皆川七海(黒木華演)が、なんでも屋の安室行舛(綾野剛)、結婚式場で知り合った里中真白(Cocco)に振り回されるといった内容。

 

綾野剛演じる安室行舛が非常に胡散臭いのですが、なんだか不思議な魅力があるのですよね。
感情に左右されないと思われた安室の、あの最後の号泣はやっぱり嘘なのですかね?

 

僕自身は本当に泣いたのではないかと思いつつ、彼がそこから何か変わるかというと、何も変わらないような気もするけれど。
この人物を使えば、いくつでも映画を作れるんじゃないかな?

 

里中真白を演じるCoccoも非常に良かったですね。
お話の最後のほうに里中真白が「幸せ」について語るシーンがあるのですが、そこで泣いてしまいましたヨ。

 

あのセリフを説得力を持って言える人って、Cocco以外に誰もいないんじゃないかな。
人を巻き込むだけ巻き込んだ後の最後のやりくちは、「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? 」のなずな系だな。
Coccoの音楽はほとんど聴いたことがないので、今度ちゃんと聴いてみよう。

 

そんな濃い二人に囲まれる黒木華の演じる皆川七海の影が薄くなってしまうんじゃないかと思いつつも、ちゃんと存在感があるのですよ。
個人的には声がとっても好き。

 

岩井俊二の描くヒロインといえば、「四月物語」の卯月のように憧れの先輩のアルバイトする本屋さんにコッソリと通い詰めたり、「スワロウテイル」ではアゲハが「YEN TOWN CLUB」を再開させるためにお金を集めたり、「花とアリス」では彼氏にするために先輩を記憶喪失にしたり、オーディションで合格するためにバレエを踊ったりと、消極的な人物のようで能動的に、自分の手で欲しいものをつかむといったことが多く、そこが面白いところでもあるのですが、今回の皆川七海は最後まで流されるままなのですね。
あの状況を観てイライラする人もいるんじゃないかな?

 

一応、お話の導入部分ではSNSを使って結婚相手を手に入れたりするけれど、どこか冷めていて、能動的な行動のようで非常に消極的。
でも、最後は叫んだり、泣いたり笑ったりと表情が豊かになっていて、握手する手を元気よく自分から差し出したりと、消極的な状況からちゃんと成長しているのですね。

 

岩井俊二の描くヒロインとしては、今回の映画はとても新鮮でした。
160分と長い映画だけれど、これ以上カットするシーンなんてないんじゃないかと思うのですが、2時間の配信限定版はどこがカットされているのでしょう?

 

そこらへんを確認するためにも配信限定版も観てみたくなりましたヨ。